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長寿食としての地中海式ダイエット

「地中海式ダイエット」という用語は、植物油が豊富で脂肪酸がほぼない、ギリシアや南イタリアの食事のスタイルを指して、アンセル・キーズ博士が1960年代に提唱したものです。学者たちがこの地方の料理に注目した理由は、7カ国で25年にわたって行った調査の結果、これらの地域では北欧やアメリカに比べて、冠動脈疾患の発症率が低いことが判明したからなのです。それからもう50年以上が過ぎ、地中海式ダイエットにもその方式によってさまざまな概念が出てきていますが、根本的にはほぼ一定の食品、正確には地中海式ダイエット特有の食物成分の一式を用います。地中海式ダイエットではおおむね共通して、エクストラバージンオリーブオイル(コールドプレス)、葉物野菜などの野菜、フルーツ、穀類、ナッツ、豆類を積極的に取り入れ、肉や魚、乳製品そして赤ワインをほどほどに、卵や菓子類は少な目にと推奨されています。このように、地中海式ダイエットではあらゆるベーシックな食品を使いますが、それをどのくらいの頻度や量で使うかで、植物油、野菜、果物、穀物しかも全粒を使う食品や料理が、日々の食事の中心に据えられているのです。

地中海式ダイエットの内容とその体への影響

現在では研究者も、地中海式ダイエットが心臓・血管系统に与える影響やその疾患発生リスクについて、アスピリン、スタチン、フィブラート(アテローム性動脈硬化の予防および治療に用いる薬剤のグループ)や一部の降圧剤のような、近代の薬剤が与える効果と同じ働きを持つと太鼓判を押しています。

地中海式ダイエットのタンパク質

タンパク質は細胞や組織などをつくる役割を果たしており、タンパク質の種類によってはホルモンになるもの、免疫抗体になるもの、体の免疫(対抗)機能を果たすもの、さまざまな生物化学上のプロセス(酵素、エンザイム)を調整するなどの役割を果たしています。タンパク質は大きく、動物性と植物性の二種類に分けられます。動物性タンパク質は、栄養素的にみて、必須アミノ酸を含めた体に必要なアミノ酸をバランスよく含んでいるため、より完全だと考えられています。植物性タンパク質は、体のアミノ酸需要に完全に応えることはできず、需要を満たすためにはたくさん摂取しなくてはなりません。さらに、体への吸収の割合も低くなっています。

地中海式ダイエットでは、基本的に動物性タンパク質源を、同地では肉よりも身近で手に入りやすい魚とシーフードにしていますが、肉も全くとらないわけではなく、脂っこくない種類の肉、家禽の肉を摂取します。また、良質なタンパク質源となっているのが乳製品で、地中海式ダイエットではチーズがその筆頭ですが、トルコ、ギリシャ、バルカン半島その他一部の地方では、ヨーグルトのような発酵乳製品がよく使われます。卵も良質なタンパク質源ですが、後で説明する飽和脂肪酸を含んでいます。

地中海式ダイエットでは、植物性の食品を中心とするため、植物性タンパク質も多様に見られます。主な植物性タンパク質源は、(キドニー豆をはじめとする)豆類およびナッツと種子となります。植物性タンパク質のなかでも、穀類に含まれるタンパク質、グルテンは特記すべきでしょう。グルテンは、セリアック病(グルテン性腸症)という重い胃腸疾患の発症に影響を与えるので、特別な注意が必要です。人によって(約3000人に1人)、グルテンが分解できないという遺伝上の特性があり、これがあると生まれてほぼすぐに腸の粘膜が損傷されはじめ、ついには腸で栄養を吸収できなくなるのです。また最近では、この疾患のほかにもグルテンの関与が言われています。グルテンが神経・精神の疾患に影響を与えている可能性について、多くの研究データが蓄積されています。グルテンフリー・ダイエットが、統合失調症、パニック障害、意識障害、自閉症などの、問題のある神経・精神プロセスに一程度好意的にはたらくことが証明されています。グルテンを含む主な穀物は、小麦、ライ麦、カラスムギ、オオムギです。いま、グルテンが人体に与える影響を排除しつつ、長所のみを残した、グルテンフリーの地中海式ダイエットが人気を集めています。

地中海式ダイエットにおける脂肪

私たちは「脂肪」というと、「肥満」「太りすぎ」などといった概念を連想します。しかし、脂肪は余計なものではなく、食餌の上では必要な成分なのです。まず、脂肪はエネルギーとして機能し、必要なカロリーを体に与えます。1グラムの脂肪には、1グラムのタンパク質あるいは炭水化物に比べて2倍のカロリーがあります。

脂肪は、脂肪酸から組成させる分子です。その脂肪酸の構成によって、脂肪の性格も異なり、そのため飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられます。地中海式ダイエットで飽和脂肪酸のもとになるものは、肉、牛乳、発酵乳製品、卵です。この種類の脂肪は、エネルギーの要求を満たしますが、運動不足になると、「万が一のときの」備蓄として脂肪組織に貯まっていく傾向にあります。だから、飽和脂肪酸は食餌から除去するか、控えるよう推奨されているのです。オーソドックスな地中海式ダイエットでは、飽和脂肪酸は少なく、エネルギー価値全体から見ると飽和脂肪酸は9%にすぎず、一方不飽和脂肪酸は24%、タンパク質は15%、それ以外は炭水化物となっています(約半分)。

不飽和脂肪酸は、「21世紀の若さの妙薬」とも言われています。関連する論文も、学術史上、化学的結合についてこれほど書かれたものはないであろうというくらいに、たくさんあります。人間の健康に主要な意味をもつのが、いわゆるオメガ3とオメガ6という、多価不飽和脂肪酸です。地中海式ダイエットでは、オメガ3は魚およびシーフードの一部から、オメガ6は、オリーブオイルを中心に、種子やナッツから摂取します。多価不飽和脂肪酸は、血液中の脂質スペクトル、すなわち高密度リポプロテイン、低密度リポプロテイン、超低密度リポプロテインの比率を正常化させることが証明されています。最近の考え方では、これらの血液中の割合が、動脈硬化ひいては冠動脈疾患や脳の血流の障害発祥のリスクを左右するとなっています。

地中海式ダイエットにおける炭水化物

炭水化物は、どのような食事でも、正常でバランスのとれた食事の基本です。食事ピラミッドの一番大きい、基盤部分を占めているのも、偶然ではありません。炭水化物は、食餌においては主にエネルギー源となっています。栄養学では、炭水化物を単糖と多糖の二つに大分別しています。単糖というのは1、2分子からなる糖類です。よく知られているグルコース、果糖、スクロース、ガラクトース、その他にもたくさんあります。これらは、「速い」炭水化物とも言われており、腸で素早く吸収され、血にめぐり、血糖値を急激に上げ、同じく急激にインスリンというホルモンを能出するのですが、これは糖をありとあらゆる細胞に届ける役割をしています。通常、しばらくすると(30分―1時間後)、インスリンによって、血の中の砂糖が神経系統(だから短期間ながら脳の働きを活性化させる)、肝臓(糖を脂肪などに変える場所)、筋肉(余分なグルコースがグリコーゲンというでんぷんに似た多糖の炭水化物になって蓄積される)に届けられます。インスリンが不足するまたはその働きに細胞が反応しないとき、血中に糖が長くとどまり、細胞が飢餓状態となり、こうして糖尿病が発症します。

多糖は、たくさんの分子ストラクチャのなかで、互いに結合した多数のグルコース分子からできています。これらを消化するには、腸に一定の酵素が必要となり、この大きな分子をとらえて、捕まった破片(グルコース分子)を血液が吸収するには時間がかかり、また段階的であり、血中のグルコースの濃度が安定(急激に上下しない)します。ここでのグルコースは、組織で消費され、(その前に高い負荷がかかり備蓄を消費したなど、特別な事情のない限り)グリコーゲンや脂肪となって蓄積されることはありません。